おばあちゃんの家のピアノの前を通るたびに立ち止まって、ポロンポロンとたたいては、にこにこしている。ショッピングモールでは、電子ピアノの売り場からなかなか離れない。そんな姿を見て、ピアノは何歳から習わせるのがいいのだろう、3歳では早すぎる? 6歳から始めたら遅い?と考えはじめる保護者の方は多いはずです。

男の子がアップライトピアノの前に座って鍵盤に手をのせ、お母さんが隣で肩に手を添えている。譜面台のタブレットには色分けされた鍵盤が映り、恐竜のマスコットがピアノの上で手を振っている

この記事では、その答えと、ピアノ教室に通いはじめてよいサイン、ピアノで頭がよくなるのかという疑問、はじめての電子ピアノ・キーボードの選び方、毎日の練習時間の目安、そして家にピアノがなくても今日からできる準備を、順にお話しします。

先に答え:ピアノは何歳から?

  • 3〜4歳(年少〜年中):ピアノと仲よくなる時期です。音楽を聞く、歌う、リズムに合わせて手をたたく、鍵盤にさわって高い音と低い音を聞きくらべる。3歳でも習えますが、遊びの形で、1回数分ずつ。きちんとした練習はまだ先です。
  • 5〜7歳(年長〜小学1年生):多くの先生が個人レッスンを始めやすいとする時期です。5本の指を5つの鍵盤に置ける手の大きさになり、15〜20分ほど座っていられ、数字や文字が読めるので楽譜も覚えやすくなります。
  • 小学2年生以降:まったく遅くありません。大きな子は理解が早く、自分で練習もできるので、ぐんぐん進みます。小学生になってから始めて上手に弾けるようになる人は、たくさんいます。

年齢はあくまで目安です。同じ4歳でも、15分夢中で弾いている子もいれば、3つ鍵盤をたたいたらミニカーを探しに行く子もいます。カレンダーより、目の前の子どもを見てください。

ピアノ教室の開始年齢:グループか個人か

「何歳から」は、教室のスタイルによっても変わります。目的が違うからです。

  • スズキ・メソードは、子どもが毎日聞くことばを自然に話せるようになることにならった「母語教育法」の教室です。公式サイトでは、ピアノは2、3歳から始められるとしていて、レッスンは基本的に個人レッスンです。たくさん聞いて、まねして弾くところから入ります。
  • ヤマハ音楽教室は、長く続いた4・5歳児向けの「幼児科」と、3歳児向けの「おんがくなかよしコース」を、2024年から『ぷらいまりー』というコースにリニューアルしています。3歳からのコースと、4〜5歳からのコースがあり、グループレッスンと個人レッスンを組み合わせて、きく・うたう・ひく・よむ・つくるを経験していく形です。
  • 街のピアノ教室の個人レッスンは、子どもが楽譜を読めて、ある程度座っていられる5〜7歳ごろから始めるところが多いようです。体験レッスンで、先生が子どもの様子を見て決めてくれるところもあります。

3〜4歳なら、親子で参加するリトミックや楽しいグループレッスン、家で親と遊ぶ時間のほうが、30分の個人レッスンより合っていることが多いでしょう。

習いはじめてよいサイン

  • 自分からピアノに向かう。「これ、どんな音?」と聞く、音楽に合わせて歌う。
  • 好きなことなら10〜15分くらい集中できる。
  • 指を1本ずつ動かせる。1本だけ立てる、ほかの指を曲げる、指先でえんぴつを持つ。
  • 右と左が分かり、5〜10まで数えられる。
  • 親以外の大人の、2〜3段階の指示に従える。
  • 直されても、すぐにはやめない。

このうち3つか4つが当てはまれば、はじめての教室に通えます。まだでも心配はいりません。家でピアノと遊ぶ時間を続けて、半年後にもう一度ようすを見ましょう。

絶対音感のために早く始めるべき?

「ピアノ 何歳から」と調べると、「絶対音感」という言葉がいっしょに出てきます。小さいうちに始めないと絶対音感がつかないのでは、と心配になる方もいるかもしれません。けれども、絶対音感がなくてもピアノは上手に弾けますし、音楽を一生楽しむのに欠かせないものでもありません。絶対音感を、ピアノを始める年齢を決める理由にする必要はありません。この記事で紹介するアプリも、絶対音感を身につけるためのものではありません。

ピアノを習うと頭がよくなる?

これもよく聞かれる質問です。有名な研究では、6歳の子に1年間ピアノ(キーボード)や歌のレッスンを受けてもらったところ、音楽を習わなかった子より IQ がわずかに多く上がりました(Schellenberg、2004年)。けれども、たくさんの研究をまとめ、きちんとした方法で行われた研究だけを残すと、知能や学校の成績全体への効果はほぼゼロでした(Sala と Gobet、2020年)。

つまり、算数ができるようになるためにピアノを習わせる必要はありません。音楽は一生の楽しみになり、難しいことにこつこつ向き合う経験になり、好きな曲を自分で弾けたときのうれしさは、それだけでかけがえのないものです。理由はそれで十分です。

はじめての1台:ピアノ・電子ピアノ・キーボード

  • アコースティックピアノは、鍵盤のさわり心地がいちばん本物ですが、値段が高く、重く、定期的な調律が必要です。音も大きいので、マンションでは時間帯に気をつかいます。しばらく本格的に習ってからでも遅くありません。
  • 電子ピアノは、ハンマーの重さをまねた重めの鍵盤で、88鍵あり、ヘッドホンをつなげます。習いはじめの子の1台目としてよく選ばれます。アコースティックピアノより手ごろで、調律もいらず、夜もヘッドホンをつければ、まわりを気にせず練習できます。
  • キーボードは、鍵盤が軽く、いろいろな楽器の音や伴奏リズムが入っていて、遊ぶにはとても楽しい楽器です。ただ、鍵盤が軽いぶん、指がピアノとは違う力加減に慣れてしまいます。ピアノを習うのが目的なら、キーボードより重めの鍵盤の電子ピアノをすすめる先生が多いようです。

3〜4歳でピアノと仲よくなっている段階なら、高い楽器を急いで買う必要はありません。小さなキーボード、おじいちゃんおばあちゃんの家のピアノ、鍵盤の大きなタブレットのアプリでも、子どもが本当に好きかどうかを知るには十分です。

毎日の練習時間の目安

  • 3〜4歳:5〜10分。1日2回に分けてもかまいません。楽しいうちにおしまい。
  • 5〜6歳:10〜20分。
  • 小学生:20〜30分。曲に合わせて少しずつ。

週末にまとめて1時間より、毎日少しずつのほうが身につきます。「ピアノの練習しなさい」と何度言うより、となりに座って聞き、「この曲、どこがいちばん好き?」とたずねるほうが、ずっと力になります。

教室に行く前に、家でできる準備

楽譜が読めなくても、どの保護者の方でもいっしょに遊べるものばかりです。

  • 黒い鍵盤のグループさがし。黒い鍵盤は、2つのグループと3つのグループに分かれて並んでいます。2つのグループを全部さわってみよう、次は3つのグループ。多くのピアノ教本でも最初に出てくる内容で、2つのグループのすぐ左がドだと分かると、ドが自分で見つけられるようになります。
  • 高い音、低い音。親が左のほうの鍵盤と右のほうの鍵盤を1つずつ鳴らし、どっちが高いかを子どもが答えます。次は役を交代。
  • リズムで手をたたく。「なべ なべ そこぬけ」のような、よく知っているわらべうたを歌いながら、ことばに合わせて手をたたきます。拍を数える前に、体でリズムを感じられます。
  • 知っている曲を弾いてみる。何度も聞いた曲なら、まちがえたときに自分で気づいて直せます。多くの教本が「きらきらぼし」のようなおなじみのメロディーから始まるのは、そのためです。

Dino Kids のピアノ

Dino Kids には「おんがく」の中に「ピアノを ならおう」があり、上の「ピアノと仲よくなる」部分を、3歳の子からできる形にしています。本物のピアノがなくても、楽譜が読めなくても始められます。詳しい紹介はピアノのページにもあります。

レッスン「くろい けんばん ふたつ」。大きな鍵盤が1オクターブ並び、「ふたつの くろい けんばんを さわってね。」と出ている
くろい けんばんは ふたつと みっつの グループに なって いるよ。まずは2つのグループをさがします

レッスンは6つのステップ、全部で27回です。

  1. ピアノと なかよし:さわると音が鳴る、黒い鍵盤2つのグループと3つのグループ、高い音と低い音、ドをさがそう。
  2. ゆびの ばんごう:ド レ ミ、指の番号1〜5、5本の指を5つの鍵盤に。
  3. リズムで あそぼう:一定の拍、「ター」と「ティティ」、2拍の長い音。
  4. みっつの おとの うた:「メリーさんの ひつじ」など、3つの音で弾ける曲。
  5. いつつの ゆびで:とぶ音、長いフレーズ、3つの音をいっしょに鳴らす和音。
  6. てを うごかそう:1オクターブ全部、「きらきらぼし」「ロンドンばし」、ベトナム民謡の「ソエ・ホア」「リー・カイ・サイン」まで。

どのレッスンも、短い練習を組み合わせています。光っている鍵盤にさわる。2つの音を聞いて、高いのは「ことり」、低いのは「ぞうさん」を選ぶ。2つの音が同じか違うかを答える。「リズムに あわせて タッチ」。1回のレッスンで星は3つまで。まだとれていない星は、バツではなく、ふちだけの星で表します。

「ピアノを ならおう」の画面。上に「じゆうに ひく」と「うた」、下にステップ「ピアノと なかよし」のレッスン「さわると なるよ」「くろい けんばん ふたつ」「くろい けんばん みっつ」「たかい おとと ひくい おと」が並ぶ
前のレッスンを終えると、次のレッスンが開きます

小さな指に大きな鍵盤。本物のピアノの白鍵の幅は約2.3cmで、3歳の子が画面で確実にさわるのに必要な幅より細いのです。そこでアプリでは一度に1オクターブだけを表示して、どの鍵盤も小さな指で押せる幅にしています。たくさんの鍵盤が必要なレッスンでは、画面を横にして使います。タブレットなら、鍵盤はさらに広くなります。

うた。弾く鍵盤に向かって音符が落ちてきて、鍵盤には「ド」「レ」「ミ」と、小さく C D E も表示されます。「れんしゅう」は子どもが正しい鍵盤を押すまで待ってくれ、「ほんばん」は本番の演奏のように拍を進めます。速さは「ゆっくり」「ふつう」「はやい」の3段階です。

「うた」の棚。「つきの ひかりで」(フランス みんよう)、「ゆかいな まきば はじめの ところ」(えいべい みんよう)、「ライトリー・ロウ」(ドイツ みんよう)、「きらきらぼし はじめの ところ」(フランス みんよう)が並ぶ
曲名の下に、どこの国の曲かが書いてあります

うたの棚には、子どもがどこかで耳にしたことのあるメロディーが並んでいます。各国の民謡やわらべうた、著作権の切れたクラシックの一節で、曲名の下に出身地が書いてあります。「なべ なべ そこぬけ」「ほたる こい」「ひらいた ひらいた」「あんたがた どこさ」など、日本のわらべうたもあります。楽譜を作れる保護者の方は、MusicXML ファイルで「おうちの きょく」を追加することもできます。やり方はMusicXML で曲を追加する方法をご覧ください。

じゆうに ひくは、思いきり弾ける自由なピアノです。どの鍵盤も鳴り、矢印で低い音域から高い音域へ移動でき、+と−のボタンで鍵盤をふやしたりへらしたり、「おとの なまえを みせる」で音の名前を表示できます。

Dino Kids はピアノの先生の代わりにはなりません。手の形を直すことも、本物の鍵盤で指の重さをかけて弾くことを教えることもできません。最初の一歩と考えてください。子どもが本当にピアノを好きかどうかを知るため、はじめてのレッスンの前に、ドを見つけ、高い音と低い音を聞き分け、リズムをたたけるようになるため、そして家にまだピアノがないときに弾く場所として。

知っておきたいこと

  • Dino Kids は、Android のスマホ・タブレット向けに Google Play で、iPhone・iPad 向けに App Store で配信しています。ピアノのレッスン、「じゆうに ひく」、「うた」はどちらでも使えます。上で紹介した、おなじみのメロディーばかりのうたの棚は、iPhone・iPad のバージョン1.3.9で加わりました。Android 版には次のアップデートで届きます。
  • 「おんがく」はアプリ全体と同じく無料です。広告もアプリ内課金もなく、アカウントなしで使えます。27回のレッスンとピアノの音はアプリに入っているので、インターネットにつながっていなくても練習できます。Dino Kids は Digi Dinos が社会のためにつくっている製品で、収益のためのものではありません。
  • ピアノの音は Dino Kids チームが自分たちで合成したもので、レッスンも自分たちで作りました。新しいうたの棚の曲は著作権の切れた民謡やクラシックのメロディーです。ピアノの先生で、レッスンの順番にご意見のある方は、dinokids@digidinos.com までお知らせください。

参考文献