3歳の子が看板を指さして「これ、なんてかいてあるの?」と聞いてくる。4歳になると、お絵かきの横に自分の名前を書きたがる。5歳の年長さんの家では、ひらがなドリルが机に並びはじめる。年齢ごとに、親の悩みも変わります。ひらがなはいつから、どんな順番で教えればいいのか。そして、文字を「好き」のまま育てるにはどうすればいいのか。

男の子が青いクレヨンで、小鳥から巣へ続く点線をなぞっている。お父さんはそばでほおづえをついて見守り、恐竜のマスコットは粘土で遊んでいる

この記事では、幼稚園教育要領が文字について何を求めているか、研究から分かっていること、家ですぐできる遊び、そして最後に Dino Kids で手伝えることと手伝えないことをまとめます。

ひらがなは何歳から?

「今日から文字の勉強」という日はありません。子どもは牛乳パックや車のナンバー、毎晩読んでもらう絵本の表紙で、とても早くから文字に出会っています。

文部科学省の幼稚園教育要領(平成29年告示)は、文字について「教える」とは書いていません。領域「環境」の内容には「日常生活の中で簡単な標識や文字などに関心をもつ」、領域「言葉」の内容には「日常生活の中で、文字などで伝える楽しさを味わう」とあります。そして、取扱いの留意点として、文字などを使いながら思ったことや考えたことを伝える喜びや楽しさを味わい、文字に対する興味や関心をもつようにすること、と書かれています。

幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(いわゆる「10の姿」)のひとつも「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」です。遊びや生活の中で文字に親しみ、文字の役割に気づき、自分の必要感から使ってみる。それが年長の終わりのめやすで、「全部読めて全部書ける」ことではありません。ひらがなの読み書きを一から教えるのは、小学1年生の国語の役目です。入学準備の全体像は小学校入学準備の記事にまとめています。

年齢ごとのイメージをざっくり言うと、こうなります。

  • 3歳ごろ:絵本を読んでもらう、身の回りの文字に気づく、ぐるぐる描きを楽しむ。
  • 4歳ごろ:自分の名前の文字など、いくつかのひらがなが分かってくる。字のような形で「お手紙」を書く。
  • 5歳ごろ:読める文字が増え、自分の名前を書いてみたくなる。

もちろん個人差はとても大きく、これは「この年齢でできなければ」という基準ではありません。

文字を知ることはなぜ大事か、それでも急がなくていい理由

2008年、米国の National Early Literacy Panel(全米早期リテラシー委員会)は、0〜5歳の子どもを対象にした約500本の研究をまとめました。その後の読み書きの力をかなりよく予測する早期の力として六つが挙がり、その中に文字の知識(文字の名前と音を知っていること)、話しことばの中の音を聞き分ける力、そして文字や自分の名前を書けることが入っています。IQや家庭の経済状況を考えに入れても、この予測力は残りました。

ただし、これは「予測する」という関係で、「早く教えるほど伸びる」という証拠ではありません。親として受け取りたいのは、文字を知ることは本物の土台なので、毎日少しずつ一緒に遊ぶ価値がある、ということ。そして、何をするかと同じくらい、どうやるかが大切だということです。

読みが先? 書くのが先?

見る・聞くが先、書くのはあと。子どもの体の育ちに合った順番です。

「あ」を一文字書くには、姿勢を保って座り、えんぴつを正しく持ち、指先と手首の小さな筋肉を思いどおりに動かす必要があります。3〜4歳の手は、積み木や粘土、紙ちぎり、ぬり絵でそれを練習している最中です。手の準備ができる前に書かせると、えんぴつの持ちかたにくせがつきやすく、くせは直すのに時間がかかります。

文字を「見分ける」のに手はいりません。目と耳と、文字を指さして読んでくれる大人がいれば十分です。家でのおすすめの流れは次のとおりです。

  1. 絵本を読んでもらう。身の回りの文字に気づく。
  2. 自分の名前の文字など、なじみのある文字が分かる。
  3. ことばの最初の音が聞き取れる(「あめ」は「あ」から始まる)。
  4. お絵かきやぬり絵で手が育ったら、なぞり書きをする。
  5. 自分の名前を書いてみる。

どの順番で教える?

ひらがなは46の清音に、濁音・半濁音(が、ぱ…)、小さい「ゃ・ゅ・ょ・っ」がつきます。50音表の「あいうえお」順は覚えやすい並びですが、書きやすさの順ではありません。

  • 名前の文字から。「ゆうと」くんなら「ゆ」「う」「と」は特別な文字です。英語圏の研究ですが、Treiman と Broderick(1998)は、子どもが自分の名前の最初の文字をほかの文字よりよく知っていて、書くのも正確だと報告しています。家族の名前、好きな食べものの名前も同じように使えます。
  • 読むのは50音表、書くのは形の簡単な字から。お風呂や壁に50音表を貼って「あめの『あ』はどこ?」と探すのは読みの遊び。書くほうは「し」「つ」「く」「へ」「こ」「い」など、画数が少なく形の単純な字から始めると、子どもが「書けた!」を味わいやすくなります。
  • 似ている字は離して。「さ」と「ち」、「ね」「れ」「わ」、「は」「ほ」はよく混ざります。一方をしっかり覚えてから、並べて見くらべましょう。
  • 清音のあとに濁音、そのあとに小さい字。「が」は「か」に点々、と分かるのは「か」を知ってからです。
  • 鏡文字は珍しくありません。左右が逆の字を書いても、この年齢ではよくあることです。何度も赤で直すより、正しい形をお手本で見せるくらいで十分です。

遊びながら覚えるひらがな

幼稚園教育要領がくり返し使っていることばは「親しむ」「関心をもつ」です。家ですぐできる遊びを挙げます。

  • 文字さがし:通園の道で「『ま』を先に見つけた人の勝ち」。看板、バス、お菓子の袋にも文字はあふれています。
  • しりとり:ことばの最後の音を聞き取る遊びで、文字を読めなくてもできます。「りんご」の最後は「ご」、と音に耳を向ける練習になります。
  • 同じ音さがし:家にあるもので「か」から始まるもの(かさ、かばん、かぎ)を集める。
  • 体で文字:粘土で「つ」を作る、ひもで「し」を作る、背中に指で書いて当てっこ。
  • 指さし読み:読み聞かせのとき、ときどき登場人物の名前を指でなぞる。教えこまず、「文字はことばを運ぶもの」と感じられれば十分です。
  • お手紙ごっこ:字のような形で書いた「お手紙」を、内容をたずねて読んであげる。要領が言う「文字などで伝える楽しさ」そのものです。

一回は数分で十分。まだ楽しそうなうちにやめると、次は子どもから「またやろう」と言ってきます。

えんぴつの持ちかたと、なぞり書き

年長になって書きはじめたら、字のきれいさより先に見たいのは三つです。

  • 姿勢:背すじをのばし、足を床につけ、紙は体の正面に。
  • 持ちかた:親指・人さし指・中指の3本で持つ。にぎりこまない。
  • 書き順と向き:ひらがなは書き順で形が整います。最初に正しい順番で覚えると、あとで直す手間がありません。

ドリルやアプリのなぞり書きは、文字の形と書き順を覚えるのに役立ちます。ただ、なぞるだけでは届かないところもあります。James と Engelhardt(2012)は、まだ字の読めない4〜5歳の子ども15人に、文字を「自分の手で書く」「お手本をなぞる」「キーボードで打つ」の三通りで練習させ、文字を見ているときの脳の働きを調べました。読むことに関わる脳の部位は、なぞる・打つのあとより、自分で書いたあとによく働いていました。小さな研究で、将来の読みの力を測ったわけではありませんが、なぞり書きは入口で、ゴールは自分の手で書くこと、と覚えておく価値はあります。

がんばらせすぎのサイン

このころの文字との出会いは、楽しいことであってほしいものです。次のようなようすが見えたら、少しペースを落としましょう。

  • 文字の時間になると逃げる、泣く、やる前から「できない」と言う。
  • 子どもが座っていられる時間をこえて続け、なだめたり叱ったりしないと続かない。
  • 親のほうが「〇〇ちゃんはもう読めるのに」とくらべはじめている。
  • 字は書けるけれど、えんぴつをにぎりこみ、肩に力が入っている。

ほかの子より読める字が少し少なくても、心配はいりません。小学1年生には、ひらがなを学ぶ時間がきちんとあります。取り戻しにくいのは「文字はこわいもの」という気持ちのほうです。

Dino Kids でできること・できないこと

Dino Kids は、まだ字が読めない3歳の子でもひとりで使えるように作った、文字のある遊び場です。

  • 「ごじゅうおん」:ひらがな104枚・カタカナ46枚のカード。ふれると文字の音、つづいて例のことばを読み上げます(「あ… あめ」)。絵文字がついているので、字が読めない子は絵で、少し大きい子はことばで分かります。
  • 「かなの かきかた」:ひらがな・カタカナを書き順どおりに指でなぞります。緑の点が書きはじめの場所、線にそって動く矢印が書く向きを教えます。星が0個になることはありません。
  • 毎日の学習プラン:ホームの「きょうの やること」は1日3つ。1つめはたいてい、いま間違いの多い文字のおさらいです。
  • おうちの人の声:文字の読み上げを保護者の声で録音して差し替えられます(録音のしかた)。
  • 漢字:ひらがなに慣れた子には、漢字 レベル1(小学1年生の80字)から書き順と読みを見られます。
  • おはなしには5か国語で500話の昔話があり、読み上げに合わせていま読んでいる文が光ります。

アプリにできないこともはっきりしています。紙の上でえんぴつを持つ手、親がひざの上で読む絵本、道ばたの文字さがし。画面の上の指は形と書き順を覚える手伝いで、自分で書く練習はえんぴつの仕事です。端末全体の使用時間は、iPad や iPhone、Android の時間管理機能で決めておくと安心です。

Dino Kids は無料で、広告もアプリ内課金もなく、アカウントなしで使えます。ほとんどの教材は通信なしでも動きます。読み上げが気になる文字や、ほしい練習の種類があれば、dinokids@digidinos.com までお知らせください。

参考文献