明かりを少し落とし、歯みがきをすませ、ふとんを肩までかけたところで、「なにか読んで」。毎晩のことなのに、ふと迷うことがあります。3歳でもう話がわかるのか、絵本を読むのと素話とどちらがいいのか、何冊読めばいいのか、スマートフォンで聞かせてもいいのか。

寝る前、布団でお母さんがねずみの嫁入り行列の絵本を開き、男の子がページを指さしてお話をしている。恐竜のマスコットは枕元で寝そべっている

この記事では、寝る前の読み聞かせについて研究や公的な推奨が言っていることをまとめ、3〜6歳の子と今夜からできることに落とし込みます。

読み聞かせはいつから?

短く答えると、「早いほどよく、遅すぎることはない」です。

米国小児科学会(AAP)は2014年の方針声明で、小児科医に対し、赤ちゃんのころから声に出して読むようすべての保護者にすすめ、少なくとも就学まで続けるよう支えることを求めています。日本でも、0歳児健診などの機会に絵本をひらく体験と絵本をセットで手渡す「ブックスタート」が、2001年に12市町村で始まり、自治体の事業として全国に広がっています。

赤ちゃんにとっての「読み聞かせ」は、絵を見て、声を聞いて、ページにさわること。2〜3歳になると短いお話の流れを追えるようになり、4〜6歳では始まりと終わりのある物語を聞き、次に何が起こるかを予想し、登場人物について自分の意見を言うようになります。

3歳、4歳、5歳でまだ習慣がなくても、今夜から始めれば大丈夫です。自分で字が読めるようになった子も、読んでもらうのは好きです。自分ではまだ読めない長い文や難しいことばに、耳から出会えるからです。

寝る前の読み聞かせを毎晩続けたい理由

ことばの力

本のことばは、ふだんの会話より豊かです。Logan ら(2019)は、よく読まれている絵本60冊の語数を数え、毎日1冊の絵本を読んでもらう子は1年に約7万8千語にふれると見積もりました。就学前の5年間で合計すると、読み聞かせの多い家庭の子は、一度も読んでもらわない子より約140万語多く耳にします。これは「聞いた」語数で「覚えた」語数ではありませんが、毎晩の数ページが積み重なると大きくなることを示しています。

1〜6歳の子ども2,500人あまりを対象にした19のランダム化比較試験をまとめたメタ分析(Dowdall ら、2019)では、保護者に絵本の読み方を伝えるプログラムで、子どものことばの力が小さいながらはっきり伸びていました。回数が少なすぎるプログラムでは、効果はほとんどありませんでした。長く読むより、続けることが大切だということです。

Hutton ら(2015)は、3〜5歳の子ども19人がMRIの中でお話を聞くときの脳の働きを調べました。家で本を読んでもらう機会が多い子ほど、意味の理解や場面の想像を支える左脳の後ろ側の領域がよく働いていました(家庭の収入を考慮しても同じ傾向)。人数は少なく、読み聞かせがその違いを「生んだ」と証明したものではありませんが、行動の研究で見えてきたことと合っています。

親子のつながり

AAP の声明は、子どもと定期的に本を読むことが親子の関係を強めるとも述べています。夜は、一日のうちで家族が落ち着いてそばにいられる貴重な時間です。急ぐことはなく、子どもは抱っこされ、なじみの声を聞きます。物語の登場人物が同じような目にあったとき、園でおもちゃを取られたことなどを、ぽつりと話しだす子も少なくありません。

日本では、国立青少年教育振興機構が2013年に公表した調査研究で、就学前から小学校低学年までに「家族から昔話を聞いたこと」「本や絵本の読み聞かせをしてもらったこと」などが多かった大人ほど、いまの「文化的作法・教養」が高い傾向が見られました。成人へのふり返りの調査なので因果関係はわかりませんが、家族が語る昔話が記憶に残っていく様子がうかがえます。

毎晩の寝る前の流れ

Mindell ら(2015)は、日本、韓国、中国、タイ、マレーシア、英国、米国など、アジア、欧州、北米、オセアニアの国と地域で、0〜5歳の子どもの母親1万人以上に尋ねました。寝る前の決まった流れ(消灯の直前にくり返す一連の習慣)がある子は、寝る時刻が早く、寝つきがよく、夜中に起きることが少なく、睡眠時間が長いという結果でした。流れを続けている頻度が高い家庭ほど、結果もよくなっていました。のちの総説(Mindell と Williamson、2018)は、読み聞かせや子守唄を、入浴、歯みがき、抱っこと並ぶ寝る前の習慣のひとつに位置づけています。

これも保護者の回答にもとづく研究で、関連を示すものです。それでも、ここから引き出せる工夫はとても簡単です。毎日同じ順番で、おはなしを消灯前の最後のステップにすることです。

世界保健機関(WHO、2019)は、3〜4歳の子に昼寝を含めて1日10〜13時間の質のよい睡眠と、規則正しい就寝・起床時刻をすすめ、座って過ごすときは大人と本を読んだりお話をしたりすることをすすめています。米国睡眠医学会(2016)の推奨は、3〜5歳で10〜13時間、6〜12歳で9〜12時間です。寝つきの悪さや夜中の目覚めが長く続くときは、小児科医に相談してください。読み聞かせはよい習慣であって、治療ではありません。

3〜6歳への読みかた

問いかけながら読む:子どもを語り手にする

いちばん研究が進んでいるのは、Whitehurst らが開発した「対話型読み聞かせ(dialogic reading)」です。最初の試験(1988年)では、3歳未満の子の保護者が1か月間、「はい・いいえ」で終わらない問いかけをすること、子どもの答えを少し広げて返すことを教わりました。1か月後、その子どもたちは、ふつうに読んでもらった子どもたちより、ことばで表現する力のテストで明らかに高い点をとり、より長い文で話し、一語だけの発話が少なくなっていました。2007年には米国教育省の What Works Clearinghouse が、300人を超える幼児を対象にした5つの研究を検討し、この読み方は話しことばに好ましい効果があると結論づけています。

こつは、一つ問いかけ、子どもの答えをほめて少し広げ、もう一度問いかけて、子どもがもう少し長く話せるようにすることです。問いかけには5つの種類があります。『おむすびころりん』を例にすると:

  • 続きを言ってもらう:「おむすび ころりん、ころころ……」と止めて、子どもに続けてもらう。
  • 思い出す:「あなの中には、だれが住んでいたかな?」
  • 自由に話してもらう:絵を指して「ねずみさんたち、何をしているかな?」
  • だれ・なに・どこ・どうして:「どうして、ねずみたちは にげちゃったの?」
  • 自分の生活とつなげる:「おもちつき、見たことある?」

一晩で5種類ぜんぶを使う必要はありません。寝る前なら二つ三つで十分です。うとうとしてきたら、そのまま静かに読み進めましょう。テストではありません。

子どもに語り直してもらう

4〜6歳の子は語り手になるのが大好きです。読み終わったら、「今日はだれがお話してくれるかな?」と聞いてみてください。順番が前後しても、場面が抜けても、自分だけの工夫が入っても大丈夫です。語り直しは、順序を覚え、ことばを探し、始まりと終わりのある文で話す練習で、小学校の毎日でそのまま使う力です(小学校入学準備の記事もどうぞ)。小さい子なら、保護者が語り、子どもは一言や動物の鳴き声で参加するところから。

同じお話をくり返しても大丈夫

「また、これ?」。はい、それでいいのです。Horst ら(2011)は、3歳の子に1週間で3回お話を読みました。同じお話をくり返し聞いた子は、ちがうお話を聞いた子より、新しいことばをずっとよく覚え、忘れにくくなっていました(新しいことばを聞いた回数は同じでした)。知っているお話は、寝る前の子どもを安心させもします。次に何が起こるかわかっているからです。子どもが選ぶ一冊(たいていはいつものお話)と、短い新しいお話を一つ、という組み合わせもおすすめです。

声と速さ

  • ふだん話すより少しゆっくり読み、どきどきする場面では間をとる。
  • 登場人物の声は少し変えるくらいで十分。お芝居のようにする必要はありません。
  • 子どもに絵を見せ、ページをめくらせ、好きなものを指させる。
  • 終わりに近づいたら声を落とし、だんだんゆっくりに。おはなしは昼から夜への橋です。

どんなお話を選ぶ?

短い昔話は寝る前にぴったりです。リズムのある語り、わかりやすい登場人物、落ち着いた結末。家族の文化に根ざしたお話で育つことは、祖父母とのつながりにもなります。

  • 短めに。 3〜4歳なら、数分で読めるお話がちょうどいい長さです。長いお話は二晩に分けても。
  • 寝る前は穏やかに。 鬼や山んばが出てくる話、追いかけっこの場面が多い話は昼間に。夜は『かさ地蔵』『おむすびころりん』『ねずみの嫁入り』のような、やさしいお話を。
  • 教訓は軽く。 昔話には、やさしさ、正直さ、働きものであることへの教えがもともと込められています。最後にお説教を足すより、「だれがいちばん好きだった?どうして?」と聞くほうが心に残ります。
  • 子どもに選ばせる。 二つの中から選ばせると、聞く気持ちが高まります。

昔話の原典には、つらい場面や残酷な場面もあります。子どもの年齢に合わせて、やわらかく語り直してかまいません。昔から語り手はそうしてきました。

何分読めば十分?

決まった数字はありません。研究から言えるのは、長さより続けることが大切だということです。Logan らの見積もりも「1日1冊」が基準で、寝る前の流れは続ける頻度が高いほど結果がよくなっていました。

実際には、短いお話を一つか二つと少しのおしゃべりで、10〜15分ほどが3〜6歳の多くの子にちょうどよいでしょう。Dino Kids の昔話は一話がおよそ20〜40の短い文で、ゆっくり読んで3〜5分ほどです。忙しい日は、知っているお話を一つ、5分だけでも、やめてしまうよりずっといいのです。「あと二つで おしまいね」と先に伝え、約束を守ると、終わりがわかって子どもも気持ちを切り替えやすくなります。

紙の絵本?スマホで聞かせる?

正直に言うと、紙の本と保護者の声がいちばんです。小さい子ほどそうです。

Munzer ら(2019)は、37組の親子に、紙の本、ふつうの電子書籍、効果音やアニメーションのある電子書籍の3つを読んでもらい、様子を録画しました。紙の本のほうが、保護者の問いかけや会話が多く、子どももお話について多く話し、いっしょに読む様子もよく見られました。タブレットでは、「そこは押さないで」といった、機械についてのことばが増えていました。

寝る前の画面は、睡眠の問題でもあります。Hale と Guan(2015)が67の研究をまとめた総説では、90%の研究で、画面を見る時間が就寝の遅れや睡眠時間の短さと関連していました(学齢期の子どもと思春期が対象)。WHO は、3〜4歳の座って画面を見る時間を1日1時間以内、少ないほどよいとしています。

それでも、ときどき機械でお話を聞かせるなら:

  • 音だけで十分です。画面を伏せるか子どもの目に入らない場所に置き、明るさを落とし、スクロールや動画への切りかえはしない。
  • ふとんの中で子どもに端末を持たせない。再生も片づけも大人がする。
  • できればいっしょに聞いて、お話について一つ問いかける。読むのが機械の声でも、おしゃべりの相手は保護者です。
  • 画面で字や絵を見たがる子とは、寝る時間よりずっと前の昼間に、いっしょに見る。

忙しい日は

帰りが遅い日、くたくたの日、出張で離れている日もあります。負担にしないで続けるための工夫です。

  • 交代で。 パパの日、ママの日。祖父母やきょうだいも読み手になれます。上手に読める人より、となりにいてくれる人が大切です。
  • 本がなくても。 子どものころに聞いた昔話を、暗い部屋で素話で語るのも、立派な読み聞かせです。
  • いつものお話を短く。 疲れた夜は、子どもがそらで言えるお話を。いっしょに言ってくれたり、代わりに語ってくれたりします。
  • 声を録っておく。 時間のある日に何話か録音しておけば、留守の夜もおうちの声で聞けます。アプリでのやりかたは昔話の読み聞かせを保護者の声で録音する方法で紹介しています。
  • 自分を責めない。 一晩休んでも大丈夫。習慣は、とぎれない連続ではなく、たいていの夜で守られていきます。

Dino Kids にできること、できないこと

Web では、昔話のページで日本の昔話100話を、3〜6歳の子にわかる短い文とやさしいことばで読めます。『桃太郎』『かさ地蔵』『おむすびころりん』『鶴の恩返し』など。インストールは不要で、スマートフォンで開いて保護者が声に出して読めます。文章は Dino Kids が昔話をもとに自分たちで語り直したもので、原典の暴力的な場面はやわらげています。

アプリでは、「おはなし」に5か国語(ベトナム語、日本語、英語、韓国語、中国語)の昔話が500話あり、それぞれの言語にその文化の昔話が100話ずつ入っています。読み上げつきで、読んでいる文が声に合わせて光り、速さは「ゆっくり」「ふつう」「はやい」の3段階。一部のお話には、1文に1枚の絵がつく「えほん」もあります。「読み聞かせの録音」では、保護者が1文ずつ声に出して録音でき、1話そろえば、子どもがそのお話を開くとおうちの人の声で流れます。

アプリは無料で、広告もアプリ内課金もなく、アカウントなしで使えます。お話を初めて開くときは読み上げ音声の取り込みに通信が要り、一度取り込めば通信なしで聞けます。Dino Kids は Digi Dinos が社会のためにつくっている製品で、収益のためのものではありません。

アプリにできないこと:ぬくもり、「どう思う?」という問いかけ、最後のページのあとのおしゃべり。アプリの読み上げは合成音声で、聞き取りやすくても、子どもの質問に立ち止まることはできません。アプリは本棚として使い、いちばんの語り手は保護者のままでいてください。子どもに合わないお話があれば、dinokids@digidinos.com までお知らせください。

参考文献