三方一両損
おとした お金を めぐる けんかを、おぶぎょうさまが みごとに おさめる おはなしです。
むかし、えどの 町に、かべぬりの きんたろうと いう 男が いました。ある 日、きんたろうは 道で さいふを ひろいました。なかには、こばんが 三両 入って いました。さいふには、だいくの きちごろうと いう 名前が 書いて ありました。
きんたろうは さっそく、きちごろうの 家へ とどけに 行きました。「おい、おまえさんの さいふだろう。おとしものだよ。」ところが、きちごろうは くびを よこに ふりました。「いったん おとした お金は、もう おれの もんじゃねえ。おまえさんが もって 帰んな。」「なんだと。おれは とどけに きたんだ。うけとれ。」「いいや、うけとらねえ。」ふたりとも がんこで、とうとう 大げんかに なりました。
けんかは おさまらず、おぶぎょうの おおおかさまの ところへ もちこまれました。おおおかさまは、ふたりの 話を じっくり 聞きました。「なるほど。どちらも 正直で、きもちの いい 男だ。」
おおおかさまは 自分の さいふから、こばんを 一両 とりだしました。「これで 四両に なった。ふたりに 二両ずつ わたそう。」ふたりは 目を ぱちくり させました。
「きんたろうは、ひろった 三両を もらえば 三両。それが 二両で、一両 へった。」「きちごろうも、三両 もどる はずが 二両で、一両 へった。」「そして わしも、一両 だしたから 一両 へった。」「みんなで 一両ずつ そんを する。これを 三方一両損と いうのじゃ。」
きんたろうと きちごろうは、おもわず 顔を 見あわせて わらいだしました。「おぶぎょうさまにまで そんを させちゃあ、もう けんかは できねえや。」それから ふたりは、すっかり なかよしに なったと いう ことです。
昔話をもとに、Dino Kids が子ども向けに文章を書きおこしました(CC0)。
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